Cosmological Experiment Group front page

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Tohoku University Astronomical Institute

服部研究室(H研)

ここは東北大学大学院理学研究科天文学専攻 服部誠 研究室(H研; Cosmological Experiment Group)のWeb頁です。 当研究室では主に、

  • 観測的宇宙論
  • 銀河団

に関する研究を行なっています。

観測的宇宙論の分野では特に、CMB(Cosmic Microwave Background radiation: 宇宙背景放射)の観測を目指した、「3K Project」を推し進めています。3k projectについてはこちらを参照。

並行してforeground成分の差し引き最適化について研究を行なっています。

銀河団の分野では特に銀河団磁場の生成について研究をすすめています。


contents

CMB

宇宙マイクロ波背景放射 (Cosmic Microwave Background)。 宇宙全体から観測されるマイクロ波の背景放射。

CMBは、ビッグバン理論について現在得られる最も良い証拠である。 標準的な宇宙論によると、CMBは宇宙の温度が下がって電子と陽子が結合し水素原子を生成され、 宇宙が光に対して透明になった時代---再結合・宇宙の晴れ上がり---のスナップショットであると考えられる。 この頃の宇宙の温度は約3000Kであった。 この時以来、輻射の温度は宇宙膨張によって約1/1100にまで下がり、現在観測される。 実際、1989年に打ち上げられた、 COBE衛星(Cosmic Background Explorer)に搭載されたFIRAS(Far-infrared absolute spectrophotometer)により、T=2.725±0.002Kが得られている。

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この、理論と観測結果の一致がビッグバン理論の証拠であると考えられている。 この観測結果により、John C. Matherは2006年度のノーベル物理学賞を受賞した。 同時に、George F. SmootがDMRによるCMBの非等方性の発見で受賞をしている。 (二人の受賞理由は"for their discovery of the blackbody form and anisotropy of the cosmic microwave background radiation"である。)

CMBは零次の近似として一様等方である(上記のT=2.725 K)。 しかし一様等方からの「ズレ」が存在する(一様成分の一万分の一程度の大きさ)。 このズレ=ゆらぎには初期宇宙の情報が含まれていることが知られており、 このゆらぎを詳細に調べることで、開闢後もないころの宇宙の状態を知ることができる。

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CMBの温度ゆらぎの全天観測(WMAP 3-year、NASA)。この観測を元に宇宙論パラメータが決定される。

銀河団

銀河団の典型的な大きさは半径R\sim {\rm a\,few Mpc}\,であり、 銀河団を構成する銀河の総数はN \sim 10^{1-5}\,個である。

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可視光で観測した髪の毛座銀河団

銀河団は宇宙で重力的に束縛された最大の階層と考えられている。銀河団中には高温プラズマ(=ICM : Intercluster Medium)が存在し、

  • その典型的な温度はT_{{\rm ICM}} \sim 10^{7-8}\,{\rm K}\sim {\rm a \,few}\,{\rm keV}\,であり、
  • 典型的密度はn_{{\rm ICM}} \sim 10^{-3}\,{\rm cm^{-3}} である。このICMは銀河と同じように重力ポテンシャルによって銀河団中に閉じこめられていると考えられている。

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    X線で観測した髪の毛座銀河団

ICMの質量は同じ銀河団中に含まれるメンバー銀河の総質量と同じ程度か寧ろ大きい程度である。 銀河団は銀河の集合と言うよりも、高温プラズマの塊であると表現した方が正確かもしれない。

ICM及びメンバー銀河を重力的に閉じこめるのに必要な質量が、ICMとメンバー銀河の質量を足した値よりも数倍大きいため、Dark Matterが存在すると考えられている。 この観点から見ると、銀河団は寧ろDark Matterの塊であると表現した方が正確かもしれない。

銀河団中にはB= (0.1\sim{\rm a\,few} ) \,{\rm \mu G}程度の磁場が存在し、 \gamma\sim 10^4\,程度の相対論的電子が存在していることが分かる。 これは銀河団の電波のスペクトル観測から、この放射がSynchrotron radiationであることが分かり、 Energy minimumを仮定することで求めることが出来る。

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髪の毛座銀河団の電波域でのスペクトル。power-lawで右肩下がりである。電波で観測した髪の毛座銀河団。点源はradio galaxy、広がった源はradio haloである。

磁場は宇宙の様々な階層スケールに普遍的に存在しているが、銀河、銀河団規模で観測されている磁場を説明する原理は明らかになっていない。

3K Project

独自のミリ波サブミリ波帯の観測装置---ミリ波サブミリ波マルチフーリエ天体干渉計(Multi-Fourier Transform interferometer; MuFT)---を開発し、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)に関する観測を行う、東北大学大学院理学研究科天文学専攻宇宙論観測グループ(服部研究室)と国立天文台天文機器開発センター(現「先端技術センター」)の松尾グループ等との共同研究プロジェクト。

1999年4月東北大学大学院理学研究科 天文学専攻 宇宙論観測グループ発足以来、 今日まで室内実験を中心に、 Fourier分光器を開口合成に応用した、ミリ波サブミリ波帯(以下sub-mm帯)の直接検出器を使用できる干渉計という、 新しい撮像分光観測装置の開発を進めてきた。 その一方で海外でのBOOMERanG, DASI, WMAP等CMBの観測が進む中、 我々の独自性が出せる観測・研究の可能性を模索してきた。

CMBは電磁波で観測できる最も遠方の物理現象である。 よってCMBを知る事は現在観測できる中で最も過去の物理現象を知る事になる。 CMBの温度異方性のスペクトル観測から宇宙の幾何学の精密測定や、宇宙論パラメータを詳細に求めることが出来る。 また、CMBの偏光観測が出来れば初期宇宙の重要な情報が引き出せるだけでなく、 地上では実験不可能な高エネルギー状態の物理現象の研究にもつながる。

日本でCMBの観測を本気でしようと考えているグループは殆んどない!

MuFT

ミリ波サブミリ波帯のボロメトリック干渉計(Multi-Fourier Transform interferometer)。 MuFTはボロメータを用いた開口合成型干渉計であり、Fourier分光器を開口合成に応用している我々独自の装置である。

MuFTは、広帯域で4つのストークスパラメータ全ての周波数・強度分布を同時に測定できる事、 即ち広帯域分光・撮像・偏光同時観測が出来ることが特徴である。 又、検出器にボロメーターを用いた天体干渉計なので、 ヘテロダイン受信機を用いる通常のミリ波サブミリ波天体干渉計と比べて、100GHz以上で高い感度を得ることができる。

研究対象

  • 観測的宇宙論
    • 宇宙マイクロ波背景放射
      • 宇宙マイクロ波背景放射の温度揺らぎ
      • 宇宙マイクロ波背景放射の偏光
    • 近傍銀河団のSunyaev-Zel'dovich効果
  • ミリ波サブミリ波領域の観測装置の開発
    • Martin & Puplett型Fourier分光器の開口合成への応用(MuFTの開発)
      • 二素子型Martin & Puplett 型Fourier分光器
      • ミリ波サブミリ波帯撮像・分光・偏光観測
  • ボロメータを中心とした直接検出器の効率的な利用法
    • THz天文学への応用
    • 民生用THzイメージング装置への応用

野辺山宇宙電波観測所

野辺山宇宙電波観測所内で行っている、基礎開発・試験観測の様子。 ここでの成果を元に、将来の宇宙マイクロ波背景放射偏光観測を実施する計画である。

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観測サイト観測サイト内部

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Bolometer & MuFTMuFT内部

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太陽のフリンジ月のフリンジ

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太陽の100-360GHzのイメージ(Simulation)太陽の100-360GHzのイメージ(Observation)


More Pictures

CMB解析

CMBの観測は20-数百GHzで行なわれる。 90GHz付近で最もCMBの寄与が大きくなるが、 この帯域では、シンクロトロン放射、制動放射(free-free)、ダスト放射が混在している。この「邪魔な」成分をforeground成分と呼ぶ。

CMBの情報を引き出し宇宙論的な解析を行う為には、このforeground成分を差し引く必要がある。 この差し引きには、

  • 20-数百GHzの広い帯域で観測を行なう
  • それぞれの成分を独立に観測しこの帯域での寄与を推定し、差し引く
    • シンクロトロン放射は電波領域、制動放射はH-alphaの放射、ダスト放射は遠赤外領域での黒体放射

ことで行なわれる。

意義・現状

最新のCMB観測であるWMAPの観測結果は、宇宙のモデルを決定するのに重要な役割を果たしている。 それ故、データ解析の不確かさを十分理解し、 それがどれほどC_l power spectrumの計算に影響を与えるかを知ることは重要である。 なぜなら、観測されたC_lを解析することで、基本的な宇宙論パラメータが決定されるからである。

ここでは、foregroundの差し引きによる不確かさについて考える。 一般にC_lの計算には全天の75%のデータが使われる。 これは25%にあたる銀河面からの放射がCMBに比べ強いからである。 しかしながら、このような大きなsky cut-offを考えたとしても、 foregroundによる不確定さを完全に無くすことはできない。 そこで、foregroundのtemplateを使い、差し引きを行なう手法が開発された。

foreground差し引きを行なったデータをもとに、 bayesianにもと基づくClの推定が行なわれ、理論との一致が認められている。

詳細

ここでは、foreground差し引きを更に進め、 精度の良いforeground成分の同定を行なうことを考えてみる。 この際、外部の観測結果を有効に使うことで、 foreground成分の同定を効率よく行なうことが可能となる。

foreground成分としては、 free-free、synchrotron、thermal dustの3成分が良く知られている。

free-free放射

free-free放射は電子とイオンとの散乱による放射である。 スペクトルが

T_{{\rm ff}}\propto \nu^{-2.14}

のように書ける。indexのかたちは一様と考えても問題ない。

後で述べるように、数拾GHz帯ではsynchrotron放射が支配的なため、 free-freeを直接観測することは難しい。 free-free放射はHII regionのような星形成領域に付随しており、 そこから放出されるH-alpha放射との相関が見られる。 その為、free-freeのtracerとしてH-alphaが使われている。

synchrotron放射

synchrotron放射は一様磁場中を運度する荷電粒子からの放射である。 荷電粒子(電子)の分布は一般に

N(\gamma) d\gamma = N_0 \gamma^{-p} d\gamma

のようなべき乗則で書くことができる。 このときsynchrotoron放射のスペクトルは

T_{{\rm synch}} \propto \nu^{-(p+3)/2} = \nu^{\beta_s}

と書くことができる。index\beta_sはその場所での荷電粒子の分布に依存する為、 一様でとはならない。

tracerとしては、Haslamによる408MHzの全天サーベーがよく用いられる。

現在、高銀緯では\beta_s=-3で急であり、 銀河面の星形成領域で\beta_s=-2.5と平らになっていることが観測から分かっている。 WMAPの結果によれば、平均的に、408MHzから23GHz(K-band);にかけては、\beta_s=-2.65、 408MHzから41GHz(Q-band)にかけては、\beta_s=-2.69となっている。

thermal dust放射

thermal dust放射は基本的には微小ダスト粒子からの黒体放射である。 実際には、黒体放射から若干の補正を加えた、grey body放射であると考えられる。 スペクトルのかたちは

T_{{\rm dust}}\propto \frac{\nu^{\beta_d+1}}{\exp[h\nu/(k_B T_{{\rm dust}})]-1}

で書ける。T_{{\rm dust}}\sim 18\,{\rm K}程度であるが、0.8<\beta_{{\rm dust}}<2.4と広がりを持つ。

tracerとしてはIRASによる赤外線の全天サーベーから作られたFDS model 8が用いられる。

anomalous放射

近年になり、以上の三つ以外の成分が存在することが示唆されるようになった。 これをanomalous 放射と呼ぶ。 少なくとも銀河面に20-4oGHz帯で、上記の三つと異なる成分が確認されている。 これは、回転している荷電ダスト粒子からの放射であると考えられている。

このanomalous放射はWMAPのforeground差し引きに積極的には取り入れられていない。

CMB偏光観測

PLANCK

CMB偏光観測は、宇宙の熱史の研究・宇宙論パラメータの詳細測定・宇宙背景重力波存在の証明・観測的初期宇宙論分野の開拓等に直接繋がり、 観測的宇宙論分野に残された課題の中でも際立って重要な課題である。 CMB偏光観測の成否は、我々の銀河系起源の偏光成分(以下FG)を如何に精度良く引き去るかに掛かっている。 FGは90GHz以下はシンクロトロン成分が、それ以上ではダスト成分が支配している。 2008年7月に打ち上げが予定されているPLANCK観測衛星は、 単一のプロジェクトで始めてシンクロ側からダスト側までカバーできる偏光観測計画である。

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Reference(The so-called Bluebook)

MuFTを用いてCMB偏光観測をする必要性

PLANCKは、60GHz以下はHEMTアンプで、100GHz以上はボロメータで、と質的に異なる検出器を用いており、お互いに内在する系統誤差をキャリブレートする為のクロスした周波数を持たない。

従って、一部の天域であってもシンクロ側からダスト側まで同一の検出器で観測し、系統誤差の心配が最小限に抑えられた偏光観測データを提供することは、 PLANCKの結果をより有効に生かす為にも必要である。

MuFTは先に述べた、広帯域で4つのストークスパラメータ全ての周波数・強度分布を同時に測定できる事、即ち広帯域分光・撮像・偏光同時観測が出来、又ボロメータを検出器として用いることが出来る天体干渉計である為、ヘテロダイン受信機を用いる通常のミリ波サブミリ波天体干渉計と比べて、100GHz以上で高い感度を得ることができる利点を持っている。 このMuFTの利点を最大限に生かせる、CMB超広帯域偏光気球観測の実現は、PLANCKの結果をより有効に生かすことになると考える。

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