Diary March, 2011



 

29日Wed.

KEK QUIET groupの被災状況を報告したいと思います。 我々KEK QUIET groupは「ざっくり」言って

  • QUIETの実データ解析
    • 今はW-band
    • pseudo-Cl(PCL) frameworkを基本とした解析
    • PCLは計算機コストがかからない。とは言っても、実際に解析を行うにはデスクトップPC、ワークステーションレベルではなかなか難しい
      • PC clusterが必須
    • これはPS主リング電源棟に設置されている
      • ここはもはや計算機室になっている
  • QUIET Phase IIに向けた開発
    • 偏光検出器較正システム開発
    • ADC開発
    • いずれも先端計測実験棟で実験を行っている

の2つに分類できます。


データ解析ですが、震災により

  • PS主リング電源棟の破損
  • 使用電力の制限

の影響を受けています。計算機への直接的な損傷は、ありませんでした(多分。I hope.)。

PS主リング電源棟は、天井に吊るされている空調設備が落下しており、また建物の周辺が地盤沈下を起こしています。 よってこの場所を放棄せざるを得ない状況です。 現在は、一年間の猶予付きですが、計算機センターにスペースを間借りしています。 先週末はこの計算機の引っ越し作業に、時間のすべてを費やすことになりました。 PS主リング電源棟と計算機センター、、、遠いです(当然ですが、屋外にも出ます)。 計算機は精密機械ですので、細心の注意を払って引っ越し作業を行いました。

幸いにも引っ越し作業による計算機の損傷は無く、今では計算機センターで元気に働いてくれています:

DSC02166.JPG

一秒でも早くW-bandデータ解析結果を報告することが責務である我々にとっては、解析を止めることは出来ません。

写真からは分かりませんが、実際は計算機nodesの半分しか立ち上げておりません。 使用電力に制限ある現状では、全てを立ち上げるのは好ましくないし、実際に不可能です。 このPC clusterがfullに動いた場合の消費電力をざっくり計算すると、

  • host server: 800 W
  • node: 345 W x 17
  • RAID: 600 W x 3
  • Network strage: 800 W

ですので、この状況を鑑みれば「厳しい」です。いろいろと。


実験室ですが、被害は軽くありません:

lab0k.JPG
lab1k.JPG
lab2k.JPG
lab3k.JPG

天井が落ちていたり、天井の空調ダクトが落ちていたりします。 実験室の天井は高く、またダクトはそれなりに重いです。 地震発生時、このダクトが落ちた付近にI徹白さんがいましたので、本当に間一髪であったと言えます。

こういった状況ですので、基本的には実験室は全面立ち入り禁止です。 天井落下の危険がある場所での実験再開は、不可能です。 ですので安全を確認しながら、今日までに実験装置の安全な場所への移動、別の建物への運び出しを行いました。 運び出したものについては、可能ならば居室で実験を再開する予定です。

国外研究機関での実験も視野に入れ、今後も開発を進めていきます。


  • クリーンルームの状況はどうでしょうか?しばらく動かせない状況ですか? -- koga 2011-04-01 (金) 17:40:10
  • 大きな被害は無いと聞いています。ただし、電力不足もそうですが、クリーンルーム立ち上げて、以前と同じ環境にまで持っていくには、時間がかかると思われます。 -- チノネ 2011-04-01 (金) 23:25:23

28日Mon.

KEK電力事情の詳細をまとめてみようと思います。

先日は、KEKは膨大な電力を消費して研究を行っていると書きました。 これは具体的にはKEKBが動いている時は約70MW、動いていないときで約30MWです。

ここで単位が「MW」となっていますが、東京電力等で良く聞く「万kW」に直すと、 「M=1e+6」, 「万k=1e+4 x 1e+3 = 1e+7」ですので、1 MW = 0.1 万kWになります。 よってKEKBが動いている時は7万kW、動いていないときは3万kWになりますが、 これが地震発生直前のKEKの電気使用量になります*1

地震の影響で現在は殆どの実験設備が止まっています。 さらに首都圏での電力不足に合わせて、 KEKでは大節電運動*2を、実施中です。 エレベーターは勿論、照明も空調も基本的にはOFFでです。 それでは仕事(=殆どの研究者にとっては研究であり、偉い人にとっては会議である)にならないので、 最低限の個人のパソコンの使用は認められています。 (これが認められないのであれば、KEKに来る必要がそもそも無くなる気がするが、、、)

照明も空調=暖房も使えない、ということは一体何を意味しているかというと、 つまり「定時に来て定時に帰れ」ということです。 朝は通勤ラッシュとともにKEKに向かい、夜は日が暮れたら、今だったら17-18時頃に帰れ、ということです。 形の上では、そもそもKEKの事務職員も研究者も、定時に来て定時に帰ることになっているらしいですが*3、 そんなのは非現実的です。 メリと張りを持って研究した方が効率がいいではないか、 という意見もあるかとは思います。 最もその通りです。定時出勤、定時退社でも仕事ができる人はいくらでも居ます。 でもこの業界、そういった方は退社後も家で仕事をしているのが常です。 また国際共同実験に参加している身にとっては、日本の時計で全てが進まないことはままある訳です。 QUIETなんか夜23時からミーティングがある訳です。 これは残業になるのだろうか*4

。。。。

この様な節電運動の末、KEKの現在の消費電力がどうなっているかというと、それでも2MW(0.2万KW)消費しているとのことです。 計画停電を行っているなか、これを多いと考えるかは難しいところです。

先週の土曜日には、いつも通りのQUIET teleconがあり、この日は23時迄QUIETメンバーが照明も付けずにKEKに残り、 (その時だけは電気を付けましたが)ミーティングに参加しました。 夜中のKEKは、街灯だけが煌煌と光っているだけで、 全ての建物は暗く静まり返っているのが印象的でした。 我々はその中を懐中電灯片手に帰ったのでした。

首都圏での電力消費量は3,000-4,000万kWです。 KEKの消費電力は、それに対して0.2%のオーダーです。 一方、首都圏の人口は40,000,000人(4e+7)、 KEK職員及びその関係者を、職員の10倍と考えると10,000人(1e+4)、よって 0.03%です。 単純に人口比で考えたとして、KEK関係者は通常の市民に比べて10倍近い電力を消費しているということでしょうか。

人はパンのみにて生きるにあらず



25日Fri.

この度の東北地方太平洋沖地震において被災された人々へ、心よりお見舞い申し上げます。

このweb pageのサーバーは、東北大学青葉山キャンパス物理A棟に設置してあります。 地震から2週間たち、ようやく復帰することが出来ました。 ちなみに地震後のA棟8階の状況は下の様な感じです:

066.JPG

物理A棟は安全が確認されたそうですが、多くの東北大学生が一時的に仙台を離れているそうです。 授業開始も4/25まで延期されました。 今まで通りの研究活動を再開できる迄には、長い時間がかかることが考えられます*5。 東北大学生でありながら東北大学には居ない私ですが、東北地方、東北大学の復興を切に願っています。

尚、私も「当然」関係していますが、学位記授与式は中止されました。残念です。

震災後の東北大学に関する情報は以下で入手可能です:


KEK(つくば)は、いろいろと(後述)被害を被っていは居ますが、現在は最低限の日常・研究生活を取り戻しつつあります。

地震発生時の3/11 14:46、私はKEK 4号館4階の自分の居室に居ました。 地震の間は、自分の後ろにあるスチール製の棚がグワングワンと揺れ動き、 何時倒れてきてもおかしくない状況でした。 幸い倒れることはありませんでしたが、私は机の下に縮こまっていました。

揺れが収まった後、しばらくして外に避難しました。 外では皆地震の大きさ、そして余震の揺れに怯えながらも、 人的な被害が無かったことに一安心している様子でした。

しかし、ご存知の通り、この瞬間にも東北沿岸、茨城・千葉沿岸には津波が迫ってきていたのでした。 津波の被害については、皆様ご存知の通りです。

KEKにとって大きな問題は、KEKの施設・J-PARCです。 KEKでは、一番重要であると思われるBELLEがupgrade中であることから、 それほどcriticalな被害は無いとのことですが、少なからず被害が出ているとのことです。 KEK構内を見回してみますと、地盤が沈下し、基礎がむき出しになっている実験棟を見ることができます。 J-PARCでは、危惧されていた津波の被害は無いとのことですが(J-PARCは、海沿いに、東海原子力発電所に隣接している。)、 やはり地震による被害はある模様です。今後、詳しく調査することで、被害の全容が明らかになると思われます。 KEK、J-PARCの最新情報は、下記から得られます:


被害の全容が明らかになる前に、我々は既に深刻な問題に直面しています。 それは電力の問題です。KEKは加速器を使った実験で研究活動を行う施設です。 研究を行うには莫大な電気を使用します。その為、東京電力とは特別な契約を結んでいたりします。

ご存知の様に、現在もまだ解決されていない福島第一原子力発電所の問題により、 関東地方は深刻な電力不足に陥っています。KEKも例外ではありません。 大幅な研究活動の縮小を余儀なくされています。

原子力発電所の喪失による電力不足は、一時的なものではありません。 今後数ヶ月、最悪年単位でも解消されるかは、明らかではありません。 これは、大げさに言えば、KEKでの研究活動そのものに影響を与えかねない問題です。

現状では、加速器を使わない我々CMBグループでさえ影響が出るレベルです。 計算機や小規模な実験(真空、冷凍機、クリーンルーム等)で消費される電力は、 加速器に比べればゴミみたいな量ですが、それでも一般家庭で使用する電力に比べれば大きなものです。 我々も又岐路に立たされていると言って過言ではありません。

我々は、幾つかのプロジェクトを抱えていますが、 地震による影響は必ず出てきます(既にもうでてきている)。 我々としては、この様な状況に柔軟に対応し最善の研究成果が出せるよう、がんばっていくつもりです。




*1 正確には、これは東京電力との契約電気料で、これ以上使用すると違約金が生じる
*2 以前も消費電力が契約電力に迫って来ると「電力注意報」が鳴り響き、節電を呼びかけていた
*3 研究者に残業は存在しない!?
*4 学生である私には関係のないことだが、、、
*5 この為、一時的に場所を提供して下さる研究機関が出て来ています(例えばIPMU)。